亀島先生

後に太宰治と心中した山崎冨枝の手記に、「きょう亀島様がお見えになる」などという記述が書かれているのを読んで、うわさは本当だったのだと思った。亀島先生はそのころ八雲書店で編集者として太宰治を担当していたらしい。そして埴谷雄高や椎名麟三など第一次戦後派が拠った「近代文学」に小説を書いてもいたのだった。私の手元には『「近代文学」創刊のころ』という本があるが、埴谷や野間宏、福永武彦など錚錚たる顔ぶれと並んで亀島貞夫の名前がある。「「戦後文学の党派性」管見」というそのエッセイの中には「私の教える高校生の中に、それぞれ個性鮮やかな少年の一群がいた・・・」という前橋高校に関する記述もある。そういえば、三島由紀夫も「近代文学」の同人だったようだ。