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悠々として生きる

私が民生委員として見守り対象としている一人暮らし高齢者の中で、古いラジオ、タイプライター、オルガン、ミシン、扇風機など何でも再生してしまう達人がいます。ネットオークションでボロボロになった品物を購入、家の一角の作業場で金属部分は磨き、部品を取り換え、箱は新たに作成してしまいます。もと家具職人だったので木工はお手の物!機械いじりも好きなので、全部ばらして、写真・動画を取り、また組み立てて、完璧に動くようにしてしまうのです。訪問するたびに再生品が増え、部屋はまるで博物館のよう。その方から電話があり、「できたから持ってっていいよ」と昭和6年ビクター製の蓄音機をいただきました。レコード針、SPレコード2枚付き。手で回す機械式、SP盤のノイズの音がなんともノスタルジック。ふたをすると家具としても美しい。地域の高齢者サロンやこども食堂で披露をしようと思います。この方は家具職人になる前は遠洋漁業の船乗りで、世界中を回ったといいます。南アのケープタウンを基地にして主に大西洋で魚を獲っていたそうです。「身体がきつくなって辞めた」と昔の話を淡々と話してくれます。「少しでも地域のひとの役に立てればと思ってさ、峯岸さんにあげることにした」。悠々と生きている、なかなか魅力的な人です。