· 

天皇に戦争終結を直訴しようとした女性

前橋空襲のあった翌日の昭和20年8月6日、一人若い女性が誰にも告げずに前橋駅始発の汽車に乗り東京駅に向かいました。「前橋は空襲で焼けてしまいました。此の侭では日本は滅びてしまいます。天皇陛下に戦争を止めて頂くようお願いに参りました」と天皇に戦争を止めるよう直訴するためです。皇居前へ行き二重橋を渡り皇居へ入ろうとして拘束されました。女性の名前は奥野とめ子さん。普通であれば刑務所へ入れられるところですが、狂人として前橋警察署長の代理と母親に引き渡され前橋へ連れ戻されました。その後家に軟禁状態にされたとめ子さんは、3度の自殺を試みるなど精神的に不安定になり9年後38歳で亡くなりました。このことは世間には全く公表されなかったのですが、72年経った昨年、とめ子さんの姪の北爪さん夫妻が「これまで一身を犠牲にして戦争を止めようと昭和天皇に直訴し、狂人扱いされたとめ子さんのことを誰にも言わなかったが、自分たちも高齢化し、この事実が知られないまま葬り去られてしまう」と、とめ子さんのことを知ってもらい、慰霊をしてもらうことを願い前橋市に手紙が寄せられたことで明らかになったのです。天皇を直訴することなど思いもよらない時代に、場合によれば極刑にされかねない行動に出てまで戦争終結を願い出ようとした奥野とみ子さんのことを長く記憶し、慰霊をしたいと思います。8月5日の前橋空襲一斉慰霊でもこの話に触れる予定です。